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あむぁいおかし製作所まいるど  Amu−Ai Sweet Factory | 小説 バレンタインデイ・キス

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小説 バレンタインデイ・キス

にやにや笑う西小路の顔が目の前にある。
「えーっと」
なんで俺は寝てるんだ。
「お早う」
「あ、ああ。お早う」
何がどうなってるのか分からないまま、俺は西小路に手を引かれて上体を起す。
あれ。
俺はスカートを凝視する。
なんで俺がスカートを穿いてるんだ!?
「はいはい。立って立って」
俺は西小路に手を引かれて、立ち上がり立派な廊下を歩く。
そうだ。確か、ここは西小路の家だ。俺はコーヒーを飲んだら急に眠くなって、、、
「うわぁ」
大きな鏡を前に俺は口を半開きにする。
紺の衣装にひらひらのエプロンドレス。
頭にはカチューシャとネコミミ。
俺はメイドさんの衣装を着せられていたのだ!
メイクもばっちり。
「西小路〜、これは一体何の冗談だ」
俺は低い声で唸る。
西小路は平然と答える。
「ちょっと寝てもらってる隙に着替えてもらった。良く似合ってるよ」
「ふっざけるな!それって犯罪だろ!」
「滅相も無い。ただのアルバイトさ。日当は2万出そう」
「だぁ〜、金で全てが済むと思うな!こんなコスプレやってられるか!」
俺はすぐさまメイドさんの衣装を脱ごうとした。
脱ごうとしたけど。
「あ、あれ?」
メイドさんの衣装って、どう脱ぐんだっけ?
白いエプロンドレス。
清潔で清楚だ。
勿論、俺はこんなの着たのは初めてだ。
どうやって脱げば良いか検討もつかない。
紺のメイド服も勿論着た事は無かったし、スカートも勿論初めてだ。
ス、スカートなんてどうやって脱げば良いんだ?
俺は途方にくれてしまう。
「あはは。キミが寝ている間に着てもらったから、キミはどうやったらそれが脱げるか検討もつかないだろう」
「ひ、卑怯だぞっ」
俺は唇を噛む。
「いやあ。良かったよ。キミが女装経験とかメイド経験とかあったら簡単に着替えられてゲームオーバーになっちゃうところだよ」
「そ、そんな事ある訳無いだろっ!」
「おいおい、それがご主人様に対する口の利き方かい。状況を良く考えてごらん。キミはどうやったらその衣装を脱げるかを知らないんだろ?」
俺はしぶしぶ頷く。
「だったら、誰かに教えてもらうか、脱がしてもらうか二つに一つだ」
「うう、、、」
「別に良いけど、その格好でこの家から出て誰かに脱ぎ方を教えてもらうか、脱がしてもらうかする気かい?」
「あう」
こんな格好を誰かに見られたり、この格好で町をうろつくなんてとんでもない。
「それに、誰かに教えてもらうって言っても、そいつがメイド服の着方なんて知らなかったらどうするよ。お前はメイド服の脱ぎ方を知っている人を探し当てるまでその格好で町をうろつくのか?学校はどうすんだ?探し当てられなかったらどうすんだ?」
俺はメイド服を着ていながら、メイド服の脱ぎ方を知らない馬鹿なメイドとして、知らない人とか知っている人にメイド服の脱ぎ方を尋ねて周る事を想像してぞっとした。嫌だ。嫌すぎる。そんで、もしも誰もメイド服の脱ぎ方を知ってる人がいなければ。俺は一生メイドの格好で過ごさなければいけないのだ。俺は愕然とした。
「ところで、俺は勿論メイド服の脱がせ方を知っている」
「!」
そうだった!
「西小路!頼む!」
西小路は右手の人差し指を左右に振る。
「ご・主・人・様」
く。くぅ。
「ご、、、主人様。お願いです。どうか私にメイド服の脱ぎ方を教えて下さい」
俺は真っ赤になって声を振り絞る。
「勿論さ」
よ、良かった。思わず笑みがこぼれる。これで一生メイド服と言う悪夢から開放されるのだ。
「ただし、今日一日はメイドとして働いてくれ。いつものメイドが休んじゃって困っているのさ。勿論、さっき言ったように日当は出すから」
「う。しょうがねぇ、、、じゃなかった。かしこまりました、ご主人様」
ああ良かった。今日一日我慢すればこの衣装が脱げるんだ。西小路がいい奴で助かった。それに奴も困ってるみたいだし。お金も貰えるし。


maid.jpg

           イラスト by あさぎり

広い家を掃除するのは大変だ。
俺は慣れない衣装で掃除を続けて疲れてきた。
大きな胸もゆさゆさ揺れて肩が凝る。
一体何が入っているのやら。
ちりんちりん。
鈴の音に俺のネコミミがぴくりと動く。
ご主人様のお呼びだ。
俺は慌てて掃除道具を片して、ご主人様の元へ急ぐ。

「お呼びでしょうか、ご主人様」
スカートの裾を持ってお辞儀をする。
「時に、今日はバレンタインだ」
「はあ」
何を言い出すんだ、ご主人様は。
「手作りチョコを作って食わせろ」
「はあ」
そんなの作った事無いぞ。
「えーっとですねぇ、、、」
ご主人様からレシピを渡される。
さすがにご主人様は準備が良い。
「かしこまりました」
しょうがないので俺は、レシピの通りにチョコを作る。
えーっと、原料を叩いて割って。
湯煎を用意して。
溶かして。
型に嵌めて。
彼への想いを込めるっと。
想いっつってもなー。
兎に角、今日一日我慢して。早く俺の服を脱がして欲しいよなー。
ご主人様ぁ、早く俺の服を脱がして下さいー。
ご主人様ぁ、早く俺の服を脱がして下さいー。
ご主人様ぁ、早く俺の服を脱がして下さいー。
こんなもんかなぁ。
お、なかなか美味しそうにできたぞ。
これならご主人様も気に入ってくれるはず。
「できましたー」
俺はにこにこして出来立てのチョコをご主人様の元に持っていく。
「お、美味そうだな」
「えへへー」
ご主人様も喜んでる。俺は甘えた声でご主人様におねだりする。
「ねぇー、ご主人様ー。これ食べたら、そろそろ私の服を脱がして貰えませんかー?」
「んー。そうだなー。もうそろそろ良い頃だな。よーし、わかった。脱がせてやる」
「わーい」
良かった。本当に良かった。
「さあ、こっち来てここに座れ」
「はーい」
俺はご主人様の膝の上に座る。
そっかー。メイド服ってこうやって脱がすのかー。これは一人じゃできないなー。俺はやっとメイド服を脱げると思うとウキウキして来た。
「口移しで食べさせて」
「もう、ご主人様ったらー」
俺は、チョコを口に含む。とっても甘くて美味しい。そう言えばお酒とか媚薬とか入れてたっけ。
俺はご主人様の首に手を回し、唇を近づける。
ご主人様の口の中にとろけたチョコを放り込む。
そして、そのまま熱いキス。あんっ
「さ、約束だったな」
俺はご主人様を見つめて頷く。
「あたしも食べてくださいね。ご主人様」

<おしまい>




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  • 妻子に隠れてこそこそとマニアックな小説を書いてます。
    イラストはあさぎりさん作

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